【事例解説】盗撮用に仕掛けたカメラが発覚(中編)
盗撮用に仕掛けたカメラが見つかってしまった事例について、前編・中編・後編の3回に分けて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
このページの目次
【事例】
愛知県内の小学校に勤務するAさんは、自身の欲求を満たす目的で、同県内の商業施設の女子トイレに忍び込み、盗撮用のカメラを仕掛けました。
カメラを設置した後、女子高生が女子トイレに入ったのが確認できたため、Aさんは女子高生がトイレから出たら、カメラを回収しようと考えました。
そうしたところ、女子高生がカメラの存在に気づき、カメラを持ってトイレから出てきました。Aさんは、どうにかカメラを回収しようと試みましたが、しばらくすると女子高生が呼んだ警察が現場に到着したため、Aさんは自身が捕まるのではないかと考えその場から逃走しました。
同商業施設内には防犯カメラが多数あり、捕まるのは時間の問題だと考えたAさんは、自首等の対応を検討すべく、弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
【今回の事例で逮捕された場合】
今回の事例では、まず性的姿態等撮影罪に問われる可能性があります。性的姿態等撮影罪とは、「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」の第2条1項に定められており、刑罰として「三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金」が定められています。
また、同条第2項は「前項の罪の未遂は、罰する。」と定めているため、性的姿態等撮影罪には未遂罪も規定されています。
そのため、Aさんには性的姿態等撮影罪、または性的姿態等撮影未遂罪が成立する余地があります。
また、別途Aさんには建造物侵入罪に問われる可能性があります。建造物侵入罪は刑法第130条に定められており、簡単にいえば、住居や邸宅以外の建造物に所有者の許可や正当な理由なく侵入すると成立する犯罪です。
その刑罰として「三年以下の懲役又は十万円以下の罰金」が定められています。
今回の事例では、たしかに商業施設の女子トイレはだれでも自由に出入りすることはできますが、「女子」トイレと性別を区別している以上、女性がこの女子トイレを使用することが想定されているでしょうから、建物の所有者がこの女子トイレは女性に限って使用を許可していると推測できます。そうであるならば、男性が女子トイレに入ることは許可されていないと解せます。
また、女子トイレとされている以上、商業施設内には男子トイレが女子トイレとは別に設けられているでしょうから、男性は男子トイレを使用すればよく、女子トイレに入る正当な理由があると判断してもらうことは難しいでしょう。
そのためAさんには建造物侵入罪も成立する余地があるでしょう。
【教員免許を持つ者に前科が付いてしまうと】
教員免許についてを定める教育職員免許法第10条1項および第5条1項3号は、「禁錮以上の刑に処せられた者」は、教員免許が失効し、また再度の教員免許取得ができなくなる旨を定めています。そのため、仮に教師が性的姿態等撮影罪で起訴されて禁錮以上の前科が付いてしまうと、教師としての仕事に大きな影響が出ることになると考えられます。