盗撮事件・のぞき事件とは 

1 盗撮行為・のぞき行為とは

盗撮行為やのぞき見る行為は、性的姿態撮影等処罰法や各地方自治体の迷惑防止条例、軽犯罪法で禁止されており、禁止に違反した場合には、拘禁刑(懲役)・罰金等で処罰されるおそれがあります。

では、盗撮・のぞき行為とは、どのようなものなのでしょうか。

盗撮」とは、はっきりとした定義が規定されているものではありません。しかし、一般にカメラやデジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯電話機などの機器を利用し、写真やビデオをひそかに撮影することをいいます。

また、「のぞき見る」とは、陰や隙間などからこっそりとみることをいいます。

2 禁止されている行為

①性的姿態撮影等処罰法違反の盗撮行為

性的姿態撮影等処罰法では、「正当な理由がないのに、ひそかに」、⑴「人の性的な部位」「又は人が身に着けている下着」「のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分」を撮影する行為や、⑵⑴のほか、「わいせつな行為又は性交等がされている間における人の姿態」を撮影する行為などを禁止しています。

⑴については、「人の性的な部位」とは、性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部を言います。

また、「人が身に着けている下着」は、「通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるもの」に限定されています。

② 迷惑防止条例違反の盗撮・のぞき行為

各地方自治体の迷惑防止条例では、駅、電車の中、公園やデパートなどの不特定多数の人が出入りできる「公共の場所」で、正当な理由なく、人に不安を覚えさせるような方法で、衣服等で覆われている人の身体又は下着をのぞき見し、又は撮影すること、などを禁止しています。

*近年では、「公共の場所」だけではなく、以前は軽犯罪法で処罰対象となっていた住居や客室、更衣室などの「人が通常衣服を着けないでいる場所」も処罰範囲に含める地方自治体が増えていますので事件を起こした自治体の条例がどうなっているか弁護士に相談することをおすすめします。

東京都迷惑防止条例では、実際の盗撮行為はもちろん、衣服で隠れている人の下着や身体を「撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること」も禁止しています。すなわち、実際に撮影したかどうかにかかわらず、スカート内にスマートフォンのカメラなどを差し向ける行為自体を禁止しているのです。

盗撮・のぞき行為は、各地方自治体によって禁止行為の内容に多少の違いはありますが、基本的に禁止されています。

③ 軽犯罪法違反の盗撮・のぞき行為

軽犯罪法は、第1条23号で盗撮・のぞき行為を禁止しています。
すなわち、軽犯罪法1条23号では、「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」と規定しています。

軽犯罪法第1条23号では、不特定多数の方の出入りがあるような公共の場所ではなく、人の住居や、浴場など通常衣服を受けないでいるような場所での盗撮行為等を対象にしています。

そして、盗撮・のぞき行為について、軽犯罪法の規定上「のぞき見た」とされています。この意味については、「物陰や隙間からこっそり見ること」と解釈され、何もしていないのに自然に見えてしまったような場合は当たらないと考えられています。

また、「のぞき見た」には、デジタルカメラや、ビデオカメラ、それらの機能を備えた携帯電話機、スマートフォンによってひそかに写真や動画を撮ることも含まれると解釈されています。

③ 盗撮・のぞき目的での立ち入り(住居侵入罪・建造物侵入罪)

盗撮・のぞき行為をする目的で、駅やデパート、他人の住居や敷地内等に立ち入った場合には、迷惑防止条例違反や軽犯罪法違反とは別に、刑法上の住居侵入罪・建造物侵入罪(刑法130条前段)も成立するおそれがあります。

3 参考規定

○「性的姿態撮影等処罰法」

(性的姿態等撮影)
第2条
次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ 人の性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
ロ イに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十七条第一項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態
二 刑法第百七十六条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
三 行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
四 正当な理由がないのに、十三歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は十三歳以上十六歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為

○「軽犯罪法」

第1条  左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
23  正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者

○「刑法」第130条(住居侵入等)

正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

○「迷惑防止条例」

各地方自治体が制定する迷惑防止条例は、全都道府県にありますが、ここでは愛知県の条例を紹介します。

愛知県迷惑防止条例(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)抜粋

(粗野又は乱暴な行為の禁止)
第2条 何人も、道路、公園、広場、駅、空港、埠(ふ)頭、興行場、飲食店その他の公共の場所(以下「公共の場所」という。)又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、航空機その他の公共の乗物(以下「公共の乗物」という。)において、多数でうろつき又はたむろして、通行人、入場者、乗客その他の公衆に対し、いいがかりをつけ、すごむ等の不安を覚えさせるような言動をしてはならない。
2 何人も、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、故なく、人を著しくしゆう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。
一 人の身体に、直接又は衣服その他の身に付ける物(以下「衣服等」という。)の上から触れること。
二 衣服等で覆われている人の身体又は下着をのぞき見し、又は撮影すること。
三 前二号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
3 何人も、公衆が利用することができる浴場、便所、更衣室その他公衆が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいる場所にいる人に対し、故なく、人を著しくしゆう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、人の姿態をのぞき見し、又は撮影し、その他卑わいな言動をしてはならない。

(罰則)
第16条 第2条第2項又は第3項の規定に違反した者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
2 常習として前項の違反行為をした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

岐阜県迷惑防止条例(抜粋)

(卑わいな行為の禁止)
第3条 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しくしゆう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次の各号のいずれかに掲げる行為をしてはならない。
一 衣服その他の身に着ける物(以下「衣服等」という。)の上から、又は直接人の身体に触れること。
二 衣服等で覆われている人の下着又は身体(以下「下着等」という。)を見ること。
三 衣服等で覆われている人の下着等の映像を見、又は記録する目的で、写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下「写真機等」という。)を設置し、又は衣服等で覆われている人の下着等に向けること。
四 前三号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
2 何人も、正当な理由がないのに、公共の場所又は公共の乗物において、衣服等を透かして見る方法により衣服等で覆われている人の下着等の映像を見、又は記録する目的で、衣服等を透かして見ることができる写真機等を設置し、又は人に向けてはならない。
3 何人も、正当な理由がないのに、公衆浴場、公衆便所、公衆が利用することができる更衣室その他の公衆が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいる場所において、当該状態でいる人の姿態の映像を見、又は記録する目的で、写真機等を設置し、又は当該状態でいる人に向けてはならない。

(罰則)
第13条 次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
一 第3条の規定に違反した者
2 前項(第13条1項)第1号の罪を犯した者が、写真機等を使用して被写体の映像を記録したものであるときは、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
7 常習として第2項の違反行為(盗撮行為)をした者は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
8 常習として第1項の違反行為をした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

 

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