【事例解説】学祭でダンス中の女子大生を撮影し逮捕(中編)
学祭でダンスサークルに所属する女子大生の下半身を撮影したとして自称カメラマンの男性が逮捕された事件について、性的姿態等撮影罪と迷惑行為防止条例違反が成立するかについて前編・中編・後編に分けて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
このページの目次
・事件概要
福岡県内の大学で開かれた学祭で、ダンスサークルによるステージ中に、踊っている女子大生の下半身を撮影したとして、自称カメラマンの男性が、福岡県迷惑行為防止条例違反の疑いで逮捕されました。
福岡県博多警察署によると、男が福岡県内の大学の学祭のステージで踊る女子大生の下半身をビデオカメラを使って撮影していたところ、それに気づいた運営スタッフが警察に通報しました。
取調べに対し、男は、「下半身を撮影したのは確かだけど、みんなに見えている服の上からだから別に問題ないと思っていた」と供述しています。
(フィクションです)
・福岡県迷惑行為防止条例違反について
前回に引き続き、学祭でダンスサークルに所属する女子大生の下半身を撮影した事例について、福岡県迷惑行為防止条例違反が成立するかについて解説します。
本件の男は、学祭で踊っている女子大生の下半身を服の上から撮影したとされています。
前回の解説の通り、本件では性的姿態等撮影罪は成立しない可能性がありますが、別途各都道府県が制定する迷惑行為防止条例において規定されている「卑わいな言動」として、処罰の対象となる可能性があります。
福岡県迷惑行為防止条例では、何人も、公共の場所又は公共の乗物において、正当な理由がないのに、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、「卑わいな言動」を行ってはならない、と規定されています(第6条第1項2号)。
本件では、男は大学の学祭で踊る女子大生を盗撮したとされています。
福岡県迷惑行為防止条例のいう「公共の場所」とは、「道路、公園、広場、駅、空港、ふ頭、興行場、飲食店その他の公共の場所」を意味します(第2条2項)。
したがって、学祭を実施中の大学が「公共の場所」に該当する場合、女子大生の下半身をビデオカメラで盗撮する行為が、当該女子大生に恥ずかしい思いをさせたり、不安を覚えさせる「卑わいな言動」を行ったとして、福岡県迷惑行為防止条例違反となる可能性があります。
ちなみに、本件で男は、「みんなに見えている服の上からだから別に問題ないと思っていた」と供述しています。
しかし、自分の行為が犯罪にならないと思っていたからといって犯罪の成立は妨げられません(刑法38条3項)。
したがって、やはり本件では、福岡県迷惑行為防止条例違反が成立する可能性があります。