【事例解説】海水浴場で女性客を盗撮し逮捕(後編)
今回は、海水浴場で女性客を盗撮し、逮捕されてしまった場合の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
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事案
Aさんは、愛知県内の海水浴場において、女性客Vさんの数メートル後ろから距離を保ち、Vさんの後ろを執拗に追いかけて、スマートフォンでVの後ろ姿を何枚も撮影しました。
その際、カメラのズーム機能を用いて、Vの臀部を強調した写真も撮影しています。
不審に思った監視員が警察に通報し、Aさんは職務質問を受けました。
Aさんは、「海の風景を撮っているだけだ。職質される意味がわからない。」などと主張しましたが、警察官の説得に応じ、しぶしぶスマートフォンの画像フォルダを警察官に見せました。
Aさんは警察署に任意同行された後、 愛知県迷惑防止条例違反の疑いで逮捕されてしまいました。
Aさんは「Vは水着を着用していたから、盗撮しても問題ないと思った」と供述しており、逮捕されたことに不満を感じているようです。
(フィクションです)
Aさんの弁解は法律的に通用するのか
Aさんは、「Vさんが水着を着用していたから、罪に問われないと思った」などと供述しています。
確かに、典型的な盗撮事件の態様は、女性のスカートの中にカメラを差し入れて撮影するとか、女子トイレにしかけたカメラで利用者の姿態を撮影する、などといったものです。
その点では、水着を着用したVを数メートル離れた場所から盗撮した場合の行為態様は、典型例とかなり異なるものといえそうです。
この点に関しては、最高裁判所第3小法廷平成20年11月10日決定が参考になります。
これによれば、
・「卑わいな言動」とは、社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな言語又は動作をいい、
・ショッピングセンターにおいて女性客の後ろを執ように付けねらい、デジタルカメラ機能付きの携帯電話でズボンを着用した同女の臀部を近い距離から多数回撮影した本件行為(判文参照)は、被害者を著しくしゅう恥させ、被害者に不安を覚えさせるような卑わいな言動に当たる
とされています。
上記に照らすと、海水浴場において、Vさんの数メートル後方を執拗につけまわし、Vさんの臀部を強調した写真を撮影するなどした行為は、Vさんを著しく羞恥させ、又はVさんに不安を覚えさせるような、「卑わいな言動」とされる可能性があります。
スカート内にカメラを差し入れて撮影するような、典型的な犯行態様でなくても、罪に問われる場合が十分にありうるということになるでしょう。