捜査官からの暴力
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捜査官からの暴力
今回は、勾留中の被疑者が捜査官から暴力をふるわれた場合の対処方法について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~ケース~
Aさんは、複数の盗撮事件の被疑者として、兵庫県内の警察署の留置場で勾留されています。
Aさんは黙秘権を行使しており、捜査官の問いについて何も答えていません。
捜査官は犯行を自白させようと考えていますが、Aさんが何も供述しないのでしびれを切らし、Aさんの顔面を殴打したり、膝を蹴るなどの暴行を行っています。
Aさんとしてはかなり恐怖を感じており、このまま捜査官の思うがままに供述調書をとられてしまうのではないかと危惧しています。
どうすれば良いのでしょうか。
(フィクションです)
~捜査官による暴力について~
取調室における捜査官の暴力は、被疑者に対して大変な苦痛、恐怖を与えます。
当然ながら許されるものではありません。
昔は、捜査官による暴力は日常茶飯事でしたが、最近では、取調室で暴力を振るわれた、という話を聞くことは少なくなりました。
それでも、取調室で暴力を振るわれるケースがゼロというわけではありません。
捜査官から暴力を受けた場合、どうすれば良いのでしょうか。
~まずは弁護士に相談する~
こんな時にAさんを守るのは弁護士です。
弁護士との接見(面会)のときに、捜査官による暴力を訴えましょう。
その上で弁護士はどのようなことができるか、例をあげてみたいと思います。
①担当刑事に抗議する
Aさんの取調べを担当している捜査官や、その上司である捜査責任者に対し抗議をします。
場合によっては、特別公務員暴行陵虐事件として、告訴を行うことも考えられます。
②怪我の様子を撮影する
弁護士に、怪我の様子を撮影してもらい、捜査官の暴力を訴える証拠としてもらうことが考えられます。
③裁判官に証拠保全を求める
刑事訴訟法第179条には、「被告人、被疑者又は弁護人は、あらかじめ証拠を保全しておかなければその証拠を使用することが困難な事情があるときは、第一回の公判期日前に限り、裁判官に押収、捜索、検証、証人の尋問又は鑑定の処分を請求することができる」と定められており、この規定を用いることも考えられます。
被疑者の怪我が治る前に裁判官に見てもらい、証拠として書面に残してもらうことが目的です。
④担当検察官に抗議をする
検察官は、警察官に指示を与えて捜査を進めています。
そこで担当検察官に抗議し、(ア)警察官に注意してもらうことが考えられます。
また、(イ)勾留の場所を警察の留置場から、拘置所に変えてもらうことが考えられます。
留置場が警察の施設であるのに対し、拘置所は、法務省が管轄する施設であることから、警察官による暴力から被疑者を遠ざけることを狙うというものです。
他にも、供述調書などが、暴力によって言わされたウソの自白が書かれている可能性があると判断されてしまい、裁判で使えなくなることがありますが(証拠能力が否定されると言います)、担当検察官としてもこれを危惧しています。
弁護人は上記の問題を訴えて、(ア)や(イ)の対応をしてもらうということが考えられるわけです。
⑤裁判で証拠能力を否定する
今回のケースの場合、起訴される場合であっても、Aさんが初犯であれば、簡易な手続で罰金刑にする略式手続による裁判を打診される可能性が高いと思われます。
略式手続は公開の裁判が開かれずにすぐに手続きが終わるので、一般的には被疑者にとってもメリットがあります。
しかし、違法な取調べがなされたことを理由に、供述調書などの証拠能力を否定することができなくなります。
略式手続きを利用するには、被疑者側の同意が必要なので、あえて略式手続に同意せず、正式な裁判で証拠能力を否定する主張をすることも弁護活動の1つとして考えられます。
さらに、証拠能力が否定され、裁判にしても有罪に出来ないと検察官に判断させることができれば、そもそも不起訴処分になる可能性もあります。
不起訴処分になれば、裁判にかけられず、前科も付かずに刑事手続きが終わります。
~お早めにご相談ください~
いずれにしても、取調室における暴力は絶対に許されるべきではありません。
捜査官から暴力を受けた場合は、一刻も早く弁護士と相談し、防止策を講じてもらう必要があるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご本人やご家族が捜査官に暴力をふるわれてお困りの方は、ぜひご相談ください。