写っていなくても盗撮
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写っていなくても盗撮
写っていないのに盗撮となるケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~ケース~
Aさんは、東京都墨田区内にある公衆便所の女子トイレに、小型カメラを仕掛け、盗撮を行うことにしました。
後日、Aさんは公衆便所に行き、カメラを回収し便所から出てきたところを、パトロール中の警視庁本所警察署の警察官に見つかり、職務質問を受けました。
Aさんが、盗撮カメラを回収する目的で公衆便所に侵入したことを認めたため、Aさんは建造物侵入罪の疑いで現行犯逮捕されてしまいました。
カメラも押収されていますが、捜査によると便所内にいる人は誰も写っていませんでした。
(フィクションです)
~Aさんに成立する犯罪は?~
今回のAさんは、盗撮のために公衆トイレの女子トイレに入り、盗撮カメラを設置し、それを回収しています。
このことから、Aさんには①東京都迷惑防止条例違反の罪、及び、②建造物侵入罪が成立する可能性が高いと思われます。
(東京都迷惑防止条例違反の罪)
東京都迷惑防止条例第5条第1項第2号は、以下のような行為を禁止しています。
東京都迷惑防止条例第5条第1項
何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
第2号 次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。
イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
この規定に違反し、有罪が確定すると、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。
本規定の特徴は、実際に衣服の全部又は一部を着けない状態にある人の姿態がカメラなどに写っていなくても、カメラ等を設置し、又は他人の身体に向けた段階で犯罪が成立する、という点にあります。
近年、このような盗撮の「前段行為」を処罰することができるように、迷惑防止条例を改正する自治体が増えてきており、東京都もその一つです。
したがって、押収されたカメラに盗撮しようとした被写体が写っていなかったから、東京都迷惑防止条例違反の罪は成立しない、という弁解は通用しない、ということです。
(建造物侵入罪)
建造物侵入罪は、正当な理由がないのに人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入する犯罪です。
公衆便所は建造物侵入罪のいう「建造物」に該当する可能性が高いと思われます。
そして、建造物侵入罪の「侵入」とは、「管理権者の意思に反する立ち入り」を意味します。
今回のケースの公衆便所の管理権者は、盗撮カメラの回収を目的とした公衆便所への立ち入りを容認していないと考えられますから、Aさんは公衆便所の管理権者の意思に反してこれに立ち入ったことになります。
したがって、Aさんに建造物侵入罪が成立する可能性は極めて高いでしょう。
~今後Aさんはどうなるか?~
今回のAさんについては、まずは警視庁本所警察署での取調べを受けることになるでしょう。
警察も、Aさんが盗撮カメラの回収を目的として公衆便所に立ち入ったことを把握していますから、盗撮の余罪についても尋ねられることになるでしょう。
取調べが終わり、留置の必要があると認められるとき、警察は逮捕時から48時間以内にAさんを検察に送致します。
検察官は、Aさんの身柄を受け取ったときから24時間以内、かつ、逮捕時から72時間以内にAさんの勾留を請求するか、Aさんを釈放するか、あるいは起訴するかを決めます。
勾留請求に対し、裁判官が勾留決定を出すと、10日間勾留されます。
勾留は、やむを得ない事由があると認められるとき、さらに最長10日の限度で延長することができます。
検察官は、捜査の最終段階において、Aさんを起訴するか、あるいは不起訴にするかを決めることになります。
~Aさんに考えられる弁護活動~
多くの盗撮事件のような被害者が存在する犯罪では、被害者と示談を行い、その損害を賠償し、反省の意思を示すことができます。
このことは、Aさんの処分(起訴か不起訴か、起訴され、有罪の場合は量刑)に影響します。
しかし、今回のケースの事件においてはカメラには誰も映っていないため、盗撮行為の被害者はいないといえます。
また、Aさんが侵入したのは公衆便所ですので、被害者は同所を管理する県又は市といえますが、こうしたところは示談交渉に応じないことが多いです。
このような場合は、弁護士会などの団体に寄付をすることにより、反省の意思を示すことができます(「贖罪寄付」といいます)。
贖罪寄付の方法、その効果について、弁護士からのアドバイスを受け、より有利な処分の獲得を目指しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所であり、Aさんのケースのような盗撮事件もご相談いただけます。
ご家族が建造物侵入事件、東京都迷惑防止条例違反事件を起こしお困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。