無断で撮影した恋人の裸の写真を知人に送信(前編)
無断で撮影した恋人の裸の写真を知人に送信した事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
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事例
大学生のAは、同じ大学に通う恋人Vとの情事の際、Vの裸の姿などを何度か無断で撮影していました。ある日、AとVは喧嘩をし、腹いせのきもちでAは知人にLINEでその撮影した動画を送信するなどしました。
これは犯罪に当たるのでしょうか。
(フィクションです)
性的姿態等撮影罪について
まず、そもそもVを撮影をしていたことについて、Vの同意があったかが問題となります。
「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」は、正当な理由もなく人の「性的姿態等」を撮影する行為を罰しています(同2条1項)。
ここでいう「性的姿態等」とは、
・人の性的な部位(性器やその周辺部、胸部など)、又は性的な部位を覆っている下着の部分や、
・わいせつな行為又は性交等がされている間における人の姿態
などが当てはまります。
Vの同意なく、Aが情事の際にVの裸の姿などを無断で撮影していた場合は、Vの「性的姿態等」を撮影をする「正当な理由」がないため、これは上記の条文が罰する撮影行為に該当します。この行為に対する罰則は、「3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金」とされています。
性的姿態等提供罪について
次に、もし上記撮影行為により生成された「性的影像記録」を、lineなどの媒体を使って他人に「提供」した場合は、性的映像記録提供罪が成立し「3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金」に処される可能性があります(同3条1項)。
さらに、特定の他人に限らず、多数者の在籍するLineのグループや、不特定多数が閲覧可能なSNSなどに上記の記録を「送信」した場合は、さらに罪が重くなり、「5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」とされています(同3条2項)。