【制度紹介】盗撮を取り締まる撮影罪を含む法律が新設②
盗撮行為を取り締まる撮影罪を含む法律について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
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事例
会社員のAさんは、通勤の際に駅の上りエスカレーターで前に立っていた女子高校生のスカート内をスマートフォンで盗撮したところ、後ろにいた人に気づかれて呼び止められました。
そのまま、駅員室に入り犯行を認めたAさんは、かけつけた警察官に逮捕されてしまいました。
「撮影罪」が成立する行為
前回の条文からみて撮影罪が成立する行為としては以下の場合になります。
①正当な理由がないのに、ひそかに、「性的姿態等」のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたものを撮影する行為
②不同意性交等に当たる行為その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成、表明又は全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
③行為の性質が性的なものではないと誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて人の対象性的姿態等を撮影する行為
④正当な理由がないのに、16歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は13歳以上16歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為
また、これらの未遂に関しても処罰されます。
①~④の内容について
①については、典型的な盗撮を想定している規定と言えます。
ここにいう「正当な理由がないのに」とは、医療行為や子どもの成長記録等を撮影する場合のように相当なものについては除外するものと考えらます。
また、男性数人で海に来て、上半身裸の写真を撮るなど、最初から不特定多数人の目に触れることを理解した上で撮影されたものは、除外されます。
②については、不同意性交や不同意わいせつ時の撮影です。ひそかにや正当な理由がなくなどの文言がないため、撮影行為自体が犯罪となっています。
③については、わいせつな行為ではないと誤信させて撮影した場合を処罰するものです。
④については、盗撮罪の保護法益を性的自己決定権であるとしたため、不同意わいせつ罪と同様に16歳未満は同意ができないと考えられたようです。なお13歳以上16歳未満には年齢差要件があります。
法定刑について
「撮影罪」の法定刑は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金となり、迷惑防止条例での処罰よりも非常に重くなっています。
この法定刑の厳罰化が今後の判断に与える影響については注目しておく必要があるでしょう。