盗撮と欠格事由

2021-09-07

盗撮と示談について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

名古屋市に住む看護師のAさんは、地下鉄内で女性のスカート内を盗撮したとして迷惑行為防止条例違反で逮捕されてしまいました。Aさんは盗撮したことを認めており、女性に謝罪した上で女性と示談を成立させたいと考えています。また、Aさんは看護師で、看護師免許の取り消しだけは避けたいと考えています。そこで、Aさんは接見に来た盗撮に詳しいあいち刑事事件総合法律事務所の弁護士に示談を成立させてほしい旨を伝えました。弁護士は示談成立に向けてさっそく弁護活動を始めました。
(フィクションです。)

~盗撮~

盗撮とはカメラなどを用いて他人を密かに撮影する行為を指します。
こうした盗撮が全て犯罪に当たるとお思いの方がいらっしゃるかもしれませんが、実際のところそういうわけではありません。
犯罪として処罰される盗撮は各都道府県が定める迷惑防止条例に規定されています。
たとえば、愛知県迷惑行為防止条例2条の2では、「公共の場所又は公共の乗物」における「衣服等で覆われている人の身体又は下着をのぞき見し、又は撮影すること」が盗撮と規定されています。
上記規定に違反して盗撮を行った場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金(常習であれば2年以下の懲役または100万円以下の罰金)が科されるおそれがあります。
常習の盗撮については、条例において科すことができる刑の上限に達しており、盗撮に対する社会の問題意識が高まっており、その扱いは決して軽いものではないことが窺えます。

~看護師と欠格事由~

保険師、助産師、看護師、准看護師の免許、試験、業務等について定めた保険師助産師看護師法9条1号(欠格事由)には次の定めがあります。
次の各号のいずれかに該当する者には、前二条による免許を与えないことがある
  1 罰金以上の刑に処せられた者
罰金以上の刑とは、罰金刑、禁錮刑、懲役刑、死刑のことを指し、処せられたとは裁判を受け、その裁判が確定したことを言います。逮捕中の場合はまだ裁判すら受けていない段階ですので、逮捕された事実のみをもって看護師等の免許を与えられないということはありません。
ところで、盗撮の罰則は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。
一般的に、初犯の場合の量刑は罰金刑を選択されることが多く、金額は事案にもよりますが、おおむね20万円~40万円の範囲が多いようです。よって、Aさんが罰金刑を受け、その刑が確定するとAさんは「罰金以上の刑に処せられた者」として看護師の免許を受けられない可能性が出てきます。

では、このような事態を回避するにはどうすればよいでしょうか?
もちろん、裁判で事実関係を争い無罪判決を獲得することができれば刑罰を受けることは回避できます。しかし、事実関係に争いのない場合、この手法はあまりにも非現実的です。
むしろ、不起訴処分獲得を目指す方がより現実的と言えます。不起訴処分を処分を獲得するには、まずは何より被害者に謝罪し、示談交渉を始めて示談を締結することが何よりも大切です。示談締結により被害者の処罰感情が緩和されれば、不起訴処分獲得の可能性は高まると言えるでしょう。

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