高校教員による校内での盗撮事件

2019-10-11

高校教員による校内での盗撮事件

~ケース~
高校教員であるAさんは、東京都東大和市内の公立高等学校の教員です。
Aさんは校内の女子トイレの個室内を盗撮しようと考え、カメラを用意し、これを女子トイレの更衣室に設置しました。
ある日、トイレの利用者がカメラに気付き、校内は大騒ぎになりました。
Aさんは罪悪感から、自らカメラを設置したことを打ち明けました。
通報を受け、校内に警視庁東大和警察署の警察官が臨場し設置されていたカメラを調べると、トイレの利用者がスカートを降ろし、トイレを利用している様子が写っていました。
Aさんは現在、警視庁東大和警察署で取調べを受けている状況ですが、今後自分がどうなるのか不安でいます。
(フィクションです)

~高校の女子トイレにカメラを設置するとどのような罪になるか?~

今回のAさんの行為には、東京都迷惑行為防止条例違反児童ポルノ製造罪建造物侵入罪が成立する可能性があります。

(東京都迷惑行為防止条例違反)
東京都迷惑防止条例のうち、Aさんに適用される可能性のある規定を以下、抜粋します。

第5条 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
(2) 次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。
イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる
ような場所

これに違反し、有罪か確定すると、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます(同条例第8条2項1号)。

Aさんの勤務する高校の女子トイレは、当然、上記イの「便所」に該当します。
同条例によれば、トイレの利用者を写さなくても、写真機その他の機器を「差し向け」、あるいは「設置」した段階で罪になります。
Aさんはすでにトイレの利用者を写してしまっていますが、トイレにカメラを仕掛けた段階で、すでに東京都迷惑行為防止条例に違反している、ということになります。

(児童ポルノ製造罪)
上記の条例違反とは別に、トイレの利用者が高校の生徒であった場合、児童ポルノ製造罪が成立する可能性があります。
「児童」とは、18歳未満の者をいいます。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第7条5項は、「ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造」する行為につき、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処するとしています。

高校のトイレで盗撮をすると、「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀(でん)部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの」を描写する可能性があります。
上記の写真やデータの記録媒体等は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第2条3項3号により、「児童ポルノ」に該当します。

反対に、18歳以上の者が撮影されていたトイレの利用者であった場合、児童ポルノ製造罪が成立することはありません。

(建造物侵入罪)
正当な理由がないのに、人の看守する建造物に侵入する犯罪です(刑法第130条前段)。
高校の女子トイレは「人の看守する建造物」に該当すると考えられます。
Aさんとは別に高校の管理権者がいる場合、その高校の管理権者は、盗撮目的でAさんが高校の女子トイレに立ち入ることを容認していないと考えられるので、Aさんの建造物侵入罪が成立する可能性が出てくるのです。
建造物侵入罪の法定刑は3年以下の懲役又は10万円以下の罰金となっています。

~盗撮の被害者・建造物侵入罪の被害者と示談~

実際に盗撮されてしまった被害者や、建造物侵入行為をされてしまった学校の管理者と示談をすることにより、東京都迷惑行為防止条例違反や、児童ポルノ製造罪建造物侵入罪につき、より有利な処分(不起訴処分やより軽い量刑による判決)を得られる可能性が高まります。
ただし、学校の管理権者は、公共施設の管理者としての立場があるので、示談に応じない可能性が高いと思われます。
盗撮の被害者との示談交渉の場合にもいえますが、相手方が示談交渉に応じなければ、示談を成立させることはできません。
まずは、示談交渉のプロである弁護士と相談し、示談交渉の見込みについてアドバイスを受けましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門とする法律事務所であり、盗撮事件の解決実績も豊富です。
盗撮事件を起こしてしまいお困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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