勾留中の大学受験

2019-11-05

勾留中の大学受験

勾留中に大学受験を控えた被疑者に向けた弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ケース~
Aさん(21歳)は浪人生活を重ね、大学受験の勉強に勤しんでいましたが、ある日、京都府南丹市内の駅において、魔が差してしまい、女性のスカート内を盗撮する事件を起こしてしまいました。
京都府南丹警察署に逮捕されてから2日後、勾留決定がなされ、Aさんは10日間勾留されることになりました。
しかし、Aさんは6日後に志望する大学の受験日を控えています。
盗撮してしまったことは反省しているつもりですが、長らく受験勉強に勤しんできたからには、是非とも受験したいと考えています。
どうしたらよいのでしょうか。
(フィクションです)

~駅内の盗撮は何罪?~

駅などで他人のスカート内を盗撮すると、多くの場合、犯行を行った都道府県が制定する「迷惑行為防止条例違反の罪」に問われることになります。
多数人が利用する駅の階段やエスカレーターでは、私服の警察官が盗撮行為などを警戒していることがあります。
盗撮をうかがわせる不審な行動が認められる者をマークし、盗撮を行った段階で検挙する捜査がよく行われます。

盗撮行為は条例で規制されているので、法定刑は各都道府県によって異なる場合があります。
例えば、今回のケースの起きた京都府では、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金です(京都府迷惑行為防止条例第10条第2項)。
北海道では、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金です(北海道迷惑行為防止条例第11条1項・第2条の2第2号ア)。

~逮捕された後はどうなるか?~

逮捕・勾留はあくまでも捜査の手段の1つです。
したがって、刑罰ではありません。
しかし、逮捕・勾留中は、留置場や拘置所の外に出ることはできず、また、自身だけで外部と連絡を取ることもできません。
弁護士を呼ぶ場合は、警察官などに頼んで連絡してもらうことになります。

また、接見禁止がなされると、弁護人や弁護人になろうとする者以外の者と面会することや、手紙のやり取りなどができなくなる場合があります。
この場合、例え家族、親族であっても、面会することはできなくなります。

逮捕・勾留は以上のように、被疑者・被告人に対し、非常に重い負担がかかる手続です。
当然ながら、このままでは受験どころの状況ではないといえます。

~逮捕・勾留中に受験する方法はないか?~

勾留決定につき、法律上の問題がない場合、また、勾留の理由及び勾留の必要が現在も認められる場合には、「準抗告」、「勾留取消請求」を行ったとしても、棄却又は却下されてしまいます。

このような場合には、「勾留の執行停止」という制度を利用することが考えられます。
刑事訴訟法第95条は、「裁判所は、適当と認めるときは、決定で、勾留されている被告人を親族、保護団体その他の者に委託し、又は被告人の住居を制限して、勾留の執行を停止することができる」としています。
条文中には、「被告人」とありますが、捜査段階の「被疑者」の勾留に対しても準用されます(刑事訴訟法第207条1項)。

執行停止が認められる場合として、実務上、①被告人の病気、②特に親しい近親者の病気や冠婚葬祭、③学生の試験があります。
執行停止は期間が定められ、一時的なものになることが多いです。
Aさんは学生ではありませんが、6日後に大学受験を控えていることにより、執行停止が認められる可能性があります。

勾留執行停止の申請を行い、認められると、勾留の執行が一時的に停止され、外に出ることができます。
外に出ることができれば、受験会場に行くことができます。

大学受験を控えながら事件を起こしてしまった場合は、上記の手段により、受験することができるかもしれません。
このような場合は、接見にやってきた弁護士に、「勾留の執行停止」について意見を求め、実現できる見込みについてアドバイスを受けることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が大学受験を控えながら、盗撮事件を起こしてしまいお困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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