【事例解説】チアリーディング女性を盗撮する不審事件
【事例解説】チアリーディング女性を盗撮する不審事件
学生スポーツ等の応援中のチアリーディング姿の女性を撮影(盗撮)して不審者情報が出された場合の法的責任について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事例紹介】
「Aさんは、夏の高校野球の大会が開かれている甲子園球場を訪れて、生徒の保護者に紛れてアルプススタンドに座りました。
Aさんの隣では、高校のチアリーディング部の女子生徒たちがチアリーディング姿で応援していました。
チアの女子生徒たちが応援に熱中しているさなか、Aさんは、女子生徒たちの胸を、チアのユニフォーム姿の上から小型カメラで撮影しました。
その際に、Aさんの様子を不審に思った周りの人から、『何をしているのか』と聞かれたAさんは急いでその場から逃げ出しました。」
(この事例はフィクションです)
【衣服を着た状態での撮影は罪?】
盗撮行為は、各地方自治体が定める迷惑行為防止条例によって規制されています。
甲子園球場がある兵庫県が定める迷惑行為防止条例でも、盗撮行為を罰則をもって規制の対象にしています。
兵庫県迷惑行為防止条例において、盗撮行為として規制の対象としているのは、「人の通常衣服で隠されている身体又は下着」を撮影したり、トイレや風呂などの「人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる人」を撮影する行為です。
そのため、たとえば、球場において応援中の女子生徒のスカートの中にカメラを差し入れて下着の中を撮影したり、球場の女子トイレに隠しカメラを設置したりすれば、盗撮行為として規制の対象になりますが、事例のAさんのように、衣服の上から女子生徒の胸を撮影する行為は、こうした盗撮行為には当たらない可能性が高いと考えられます。
【卑猥な言動】
もっとも、だからといってAさんの撮影行為が罪に問われないということではありません。
兵庫県迷惑行為防止条例3条の2第1項1号では、公共の場所または公共の乗物において、人に対して、不安を覚えさせるような卑わいな言動を行うことを禁止しています。
「卑わいな言動」にあたる典型的な行為としては、スカートをまくる行為や、持っている物で相手の胸や臀部に押し付ける行為、女性に「エッチしよう」と声をかける行為などがありますが、衣服の上からの女性の姿を撮影した行為が「卑わいな言動」に当たるとした裁判例が実際にあります。
たとえば、東京高等裁判所令和4年1月12判決は、公共の場所において、被告人が小型カメラで、被害女性のブラウス着用の胸部付近やスカート着用の臀部を撮影した行為を「卑わいな言動」に当たるとして、被告人に懲役8か月の有罪判決を下しました。
そのため、球場における女子生徒の胸を衣服の上からの撮影行為も、公共の場所における不安を覚えさせるような「卑わいな言動」として、当局の摘発の対象になる可能性がある行為です。
なお、兵庫県迷惑行為防止条例では、このような「卑わいな言動」をした場合、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科される可能性があります(同条例15条1項)。
【チア姿の女性を撮影してしまいご不安な方は】
衣服を着た女性を撮影した行為が「卑わいな言動」として罰則が科されるかは、そのような撮影行為が、人に不安を覚えさせるようなものでなければなりませんので、撮影の具体的な状況いかんによっては、「卑わいな言動」に当たらないと判断される可能性があります。
このような判断は非常に難しいものになりますので、ご自身で安易に判断なさらずに、まずは、弁護士にご相談して、専門的な知識に基づくアドバイスを受けられることをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
野球場でチア姿の女性を撮影してしまいご不安な方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。