盗撮と犯罪

2019-04-14

盗撮と犯罪

福岡市南区に住むAさんは,日頃から目をつけていたVさん方の敷地内に入り,空いていた浴室の窓の隙間から小型カメラを差し入れる盗撮行為をしたところ,たまたま散歩に出ようとしていたVさんに盗撮行為を見つけられてしまいました。
浴室では,Vさんの娘(18歳,高校3年生)が入浴中でしたが,カメラの中身を確認すると,浴室内部の状況は映っていましたが,VさんやVさんの裸の姿は映っていませんでした。
Aさんは,通報を受け駆け付けた福岡県南警察署の警察官に住居侵入罪と軽犯罪法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
(フィクションです)

~盗撮とは何罪?~

テレビやネットなどで「盗撮」で逮捕されたというニュースは目にしたり耳にしたりするものの,それが何の罪に当たるのかはっきりと認識している方は少ないと思われます。
そこで,今回は,

盗撮が何罪に当たり,どんな罰則が設けられているのか?
・本件では何の罪に当たるのか?

について触れていきたいと思います。

= 迷惑防止条例 =

迷惑行為防止条例は各都道府県ごとに設けられています。
福岡県迷惑行為防止条例ではその6条2項,3項に盗撮行為に関する規定を設けています(条例の規定の内容は,各都道府県の条例ごとに異なりますから,詳細は条例等でご確認ください)。

福岡県の迷惑防止条例では,以下のような行為が罰せられることとなっています。

*「公共の場所」,「公共の乗物」,「その他の公衆の目に触れるような場所」において,
・通常衣服で隠されている他人の身体又は他人が着用している下着をのぞき見し,又は写真機等を用いて撮影すること
・上の行為をする目的で写真機等を設置し,又は他人の身体に向けること

*「公衆便所」,「公衆浴場」,「公衆が利用することができる更衣室」,「その他の公衆が通常衣服又は全部又は一部を着けない状態でいるような場所」で,
・当該状態にある人の姿態をのぞき見し,又は写真機等を用いて撮影すること
・上の行為をする目的で写真機等を設置し,又は他人の身体に向けること

そして,これらの盗撮行為の罰則ですが,通常の盗撮行為の場合,「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」,常習として盗撮行為を行った場合は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」の範囲で処罰されることが多いです。

= 軽犯罪法(23号,窃視の罪) =

軽犯罪法では,1条の1号から34号までに,日常起こり得る比較的軽微な犯罪について規定しており,窃視の罪は1条23号に規定されています。

軽犯罪法の中では,正当な理由がなくて,「人の住居」,「浴場」,「更衣場」,「便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所」をひそかにのぞき見る行為が罰されることになっています。

そしてその罰則は1号から34号まで全て拘留(1日以上30日未満の期間,刑事施設(刑務所など)に収容)又は科料(千円以上1万円未満のお金を国に納付)です。
    
= 児童ポルノ禁止法(7条5項,製造の罪) =
   
児童ポルノ禁止法とは,正式名称「児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」といいます。
ここで「児童」とは18歳未満の者をいいます。
児童が盗撮行為の対象となった場合は,児童ポルノ禁止法(略称)7条5項で定める児童ポルノ製造の罪に当たる可能性があります。

児童ポルノ禁止法では,児童ポルノ禁止法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態(例えば,児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態)が描写された写真,電磁的記録にかかる記録媒体,その他の物(児童ポルノ)をひそかに製造する行為を罰することとしています。

そしてその罰則は,3年以下の懲役又は300万円以下の罰金と定められています。

~ 本件では何の罪に当たるのか? ~

これまで盗撮行為に関する条例,法律およびその罰則についてご紹介してきました。
では,Aさんの行為はいずれに当たるのでしょうか?

この点,Aさんが盗撮に使用した小型カメラには,Vさん方の浴場が映っていたということでした。
また,ビデオカメラ等で浴室等を撮る行為も「のぞき見る」行為に当たると解されています。
ですから,まず,Aさんが小型カメラを使ってVさん方の浴室を撮る行為は軽犯罪法の窃視の罪に当たります。

また,Aさんが,Vさん方の敷地内に無断(盗撮行為で入ったのですから無断で入ったといえるでしょう)で入る行為は住居侵入罪に当たります。
敷地も住居の一部と認められる場合は,やはり住居侵入罪の「住居」に当たるのです。

今回のAさんの行為では,実際に誰かの姿を盗撮することはできておらず,さらに現場が個人宅の浴室であるため,福岡県の迷惑防止条例違反や児童ポルノ禁止法違反とはならず,上記軽犯罪法違反や住居侵入罪となると考えられます。

このように,盗撮事件において成立しうる犯罪は幅広く,どういった犯罪に当たるのかは盗撮事件ごとの詳しい状況や態様を当てはめながら検討しなければなりません。
そのためには法律の専門知識が必要不可欠ですから,まずは弁護士に相談だけでもしてみることが大切でしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,初回無料でご利用いただける法律相談を行っています。
初回無料ですから,まずは相談だけでも,という方も遠慮なくご利用いただけます。
ご予約は0120-631-881で受け付けていますので,お気軽にご連絡ください。
福岡県南警察署までの初回接見費用:35,900円

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